りんご作りの1年・春夏秋冬
「りんご屋さんってどんなことしてるの?」とよく聞かれることがあります
ここでは、私たちが年間を通して どんな仕事をしているのかを季節ごとに紹介します。
整枝剪定(せいしせんてい)
りんごの樹は成長します。毎年芽から新しい枝が伸び、他の植物と同様に、大きくなっていきます。
りんごの樹は頂部優勢という特性を強く持っており、芽から伸びた枝はただただ上の方向に伸びようとする性質があります。
美味しいりんごを作るにはどの枝にも効率よく日光を当て、多くの葉に栄養を作ってもらう必要があります。もちろん果実そのものも光を必要としています。
そこで、余分な枝を切り落とし、必要な場所に枝を配置し、日光が良く入るように、作業性までを考慮して、バランスのよい樹を作っていきます。必要によっては、ロープなどで伸びるべき方向に誘引してあげます。
樹には私たち人間と同じように、一本一本個性があり、性格を持っています。彼らの性格をきちんと読み取り、技術と経験、勘を働かせて行う、一人前になるのに15~20年かかるという熟練した職人技です。その職人たちが、時間をかけて慎重に行い、造り上げた樹は、愛着もあり、我が子のような存在です。
りんご造りは剪定に始まり剪定に終わる と言われるほど、年間を通して一番大切な仕事です。
枝拾い(えだひろい)
剪定で切り落とした枝を拾い集めます。そのままにしておくと、病害虫の温床になったり、作業の邪魔になるため、広い面積を時間をかけて行います。
花摘み(はなつみ)
樹は前の年に枝に蓄えた栄養を使って、葉を作り、花を咲かせます。
必要な花だけに栄養が集まるように、余分な花を摘んでいきます。およそ咲く花の5~10分の1程度までに制限します。
なるべく早く適切な花の数に抑えることが大切です。
結実確保(けつじつかくほ)
当園には受粉用の品種も植えてあり、受粉樹から生の花粉をダチョウの羽にたっぷりと付けて受粉していきます。りんごは自花不和合性という特徴があり、自分の花粉では交配しません。
必ずほかの品種の花粉を受粉することで実をならせます。
前年の花粉を冷凍貯蔵していたものを使うこともあります。
たっぷりと、贅沢に作業します。結実した種子から養分が欲しいという信号が出るため、果実の中の種子が多ければ多いほど果実が充実します。
一つの花でも沢山の花粉が付くように心がけます。
また、補助的に訪花昆虫であるツツハナバチも利用して受粉を手伝ってもらっています。
自然界のツツハナバチは本来もっと早い時期に活動するため、受粉期に合わせて活動できるように巣を冷蔵庫に入れて保管します。
ソメイヨシノが8分咲きになったのを見計らって冷蔵庫から巣箱に設置します。同時に来年度活動するツツハナバチの卵を産む新しい人口的な巣も設置します。
病害虫防除(びょうがいちゅうぼうじょ)
生きているりんごの樹は、私たち人間と同様に、病気にもなれば怪我もします。
悪い虫や、野生の動物たちに狙われたりもします。
樹の健康を管理して美味しいりんごを採るために、低濃度の安心できる薬剤を必要最小限だけ散布します。
草刈り(くさかり)
畑に生える草は、病害虫の温床になるばかりか、りんごの樹にとって土壌中の水分、栄養分の競合相手となるため、こまめに刈ります。
さらに、刈った草は有機質肥料としてそのまま使えるため、肥料として有効な草を人工的に生やしては刈るという行為を収穫期まで繰り返します。
矛盾しているようですが、りんご作りにとっては、効果的な1つの技術です。
摘果(てきか)
受粉した花は、次第に大きくなっていきます。この肥大には2種類あって、1次肥大では細胞数が増えることで果実が大きくなっていき、2次肥大では1次肥大で増えた細胞一つ一つが大きくなることで果実は大きく成長します。
つまり1次肥大がなければ2次肥大でもそれほど大きくならないのです。
実を多くならせすぎると、実ひとつあたりの栄養がたりなくなり、1次肥大が進みません。そればかりか、樹が弱ってしまい、翌年の花の数が激減してしまいます。
そこで、細胞の数が多い大きなりんごを作るために、適切な着果数に制限して、余分なものを摘み取ります。花摘みに引き続き、1次肥大期に間に合わせるため早く終わらせることがポイントになります。
およそ葉60枚に果実1つとしますが、花摘みから通して、咲いた花の50から70分の1程度にします。
花摘みから通して、一輪摘花、本摘果、仕上げ摘果と、開花から通して3回行い、最後に見直し摘果をします。
この作業は果実を樹上で選別する作業でもあります。
よい果実になる素養のあるものだけを残し、他はすべて落とします。さらに樹の状態を見ながら、適正な着果量に制限していきます。「樹上選果」と言ってもよい作業です。
潅水(かんすい)
当たり前のことですが、他の植物と同様に、地中に張り巡らせた根より水分、養分を吸収しています。
降水がなければ、りんごが育たないばかりか、樹も弱ってしまいます。
また、極端に乾燥した土壌に急激に水分が増えた場合、りんごの果実も急に水分を吸収しようとしてしまい、裂果(表皮が果実肥大のスピードについていけずに避けてしまうこと)が発生してしまうこともあります。
土壌中にある程度の水分が常に蓄えられていなければ、おいしいりんごは作れません。
そこで、雨がしばらく降らない場合は、人工的な降水をする必要があります。これが潅水です。
夏季剪定(かきせんてい)
春から沢山の枝が新しく生まれたり、成長し伸びていますが、枝や葉が必要以上に繁茂すると、必要な場所に光が届かなくなったり、病害虫の防除がしにくくなります。
そこで今年伸びた必要のない枝を切り落としたり、冬に行った剪定の調整をします。 また、新しい枝が伸びるために栄養が使われることで果実への栄養が足りなくなったり、呼吸と光合成のバランスが不釣合いになり、効率の悪い樹になってしまいます。
支柱立て・誘引(しちゅうたて・ゆういん)
果実は大きくなることで重みも増し、枝も果実の重みで垂れ下がっていきます。
そうすると光を十分に受けることが出来なくなったり、ひどい場合は、大きな太い枝でさえ裂けてしまうこともあります。
そこで、果実の重みを支えるために、枝に柱をつけて支えたり、細い枝であればロープなどで吊り上げて、全体的に垂れ下がるのを防ぎます。
着色管理(ちゃくしょくかんり)
りんごの果実は幼いころは、鮮やかな黄緑色です。
りんご品種の多くは成熟するとともに赤くきれいに色がついていきます。この着色は日光を受けることがなければ起こりません。
・葉摘み (はつみ)
綺麗に色が入るように、果実に直接触れている葉や日光のさまたげになる葉を摘み取ります。
・玉回し (たままわし)
枝に触れていたり一方方向からしか光が届かない果実は、全体に色が入るように、果実を回して向きを変えます。
収穫(しゅうかく)
いよいよ収穫です。
当園でメインに栽培している「ふじ」という品種は、成熟するのに日数を必要とする品種です。
しかしながら当地では比較的早い時期に雪が降ったり気温が氷点下になることがあります。凍ってしまうと食感、味覚は落ちてしまいます。
このバランスをみながら、ぎりぎりまで成熟を進め、凍ってしまう前に収穫をします。
もちろん一つ一つ丁寧に手でもぎ取り、大きさや着色の程度、キズの有無などチェックをして分別し鮮度を保つため速やかに、涼しくて凍ることのない倉庫に貯蔵します。
ご注文受付(ごちゅうもんうけつけ)
ありがたいことに、お蔭様で多くのご注文を頂戴します。
受付日ごとに整理し、荷造り出荷するための伝票を作成します。
確認が必要な場合も少なくはなく、そういった際には、お客様のご自宅にお電話させて頂くこともあります。
出荷(しゅっか)
伝票に従って、基本的には受付順に荷造りをしていきます。
ここでは最終的な品質のチェックを行いながら、丁寧にひとつひとつ荷造りをします。
箱詰めされた製品はその日のうちに、宅配便にて出荷されます。
施肥(せひ)
一年間頑張ってくれた土、樹に感謝の気持ちをこめて、また来年、品質のよいりんごが実るように祈りを込めながら、肥料を撒きます。蜜入りの良いりんごを作るために、必要な場所に必要なだけ、丁寧に撒きます。
このバランスも樹の状態をみながら、経験と勘を必要とする技術です。樹にとって栄養が足りなかったり、多すぎると、バランスが悪くなって良いりんごが作れません。土と話が出来るまで、20年とも30年とも言われます。
また、この施肥こそが、蜜入りのよいりんご造りには欠かせない秘訣に1つになっています。何を入れているかは、内緒なんです。
勿論怪しいものは入れませんが、ここに小西園の1つのこだわりが隠されています。